今回は,摩擦係数と摩擦力のお話.
摩擦力って?
2つの物体が接触しているときに働く,運動を邪魔しようとする力のこと.
運動の方向や力の方向とは常に逆向きに作用します.
動摩擦力
- 動いている物体にはたらく摩擦力のこと.
物体を押したりして動かす時,動き始めるとフッと軽くなるような感じがすると思います.
これは動いているときの摩擦力と静止しているときの摩擦力に差があるから.
動いているときの摩擦力を「動摩擦力」と呼びます.
動摩擦力は速度によらず常に一定です!
静止摩擦力
- 物体が止まっているときに働く摩擦力のこと.
静止摩擦力は,外からかかる力によって大きさが変わります.
静止摩擦力は物体が静止していることが条件です.外力と静止摩擦力は常に釣り合っています.
より外力がだんだん大きくなって,静止摩擦力の最大値よりも大きくなると物体が動き出します.この「静止摩擦力の最大値」のことを「最大静止摩擦力」と呼びます.
摩擦係数とは?
教科書的に言うと滑りにくさの指標なのですが,
垂直抗力のうち,どれくらいの割合が摩擦力になるかを示す指標
と覚えたほうが実践の時に楽です.
- 物体が静止しているときの摩擦係数:\(μ\)
- 物体が動いているときの摩擦係数:\(μ’\)
まずはわかりにくいと思うので例で説明します.
静止摩擦にはちょっとした落とし穴がありますので,簡単のために物体が動いているときを想定します.
外力\(F\)がかかっている,質量\(m\)の物体を考えます.
摩擦係数が\(0.5\)の時,摩擦力は\(垂直抗力 \times 0.5\) の力になります.つまり式にするとこういうことになります.
$$摩擦力=N \times μ’ $$
\(N\):垂直抗力[N]
↑の式は動摩擦力の時だけです!静止摩擦力の時はちょっと別.
イメージは掴みやすいとおもいます.
静止摩擦係数に潜む落とし穴
続いて,静止摩擦係数の落とし穴にハマらないための対策です.
静止摩擦係数に垂直抗力をかけたもの \(μN\) を素直に静止摩擦力にしてしまいたくなりますが,これは間違い.
静止摩擦係数に垂直抗力をかけたもの \(μN\) では,最大静止摩擦力が求まります.つまり,
$$μは「最大静止摩擦係数」$$
って覚えちゃったほうが間違いが減ります.式にすると↓のような感じになります.
$$F=μN$$
\(F\):最大静止摩擦力
\(μ\):(最大)静止摩擦係数
\(N\):垂直抗力
…正直あまり最大静止摩擦力以外はテストにでません.が,方法はあります.
- 外力を求める
- 外力と反対方向に,外力と等しい力を書く←完成!
これだけ.摩擦係数なんて一切使いません.
この時求めた静止摩擦力が,最大静止摩擦力 \(μN\) よりも大きかった場合は物体が動いてしまいます.
じゃあ静止摩擦力はどうやって求めればいいんだよ!