X線

X線とは?

X線は,19世紀の終わり頃に正体不明の放射線としてレントゲン氏が発見しました.

この正体不明の放射線の性質を調べたところ,電場や磁場に影響されず直進することから荷電粒子ではなく,さらに光が透過しないような物質に対しても透過してしまうので,謎の放射線ということで「X線」と名づけられました.

X線の発生

実験でX線を発生させるときはX線管が多く用いられます.

真空のガラス管の中に,フィラメントとターゲット(X線発生源になる金属)を設置した構造.ターゲットとフィラメントを高圧電源につないであげれば,フィラメントとターゲットの間には強い電場が発生します.

実験原理

コイル状のフィラメントに電流を流して加熱することで電子が放出されます.この電子のことを熱電子と言いますが正体はただの電子です.

放出された熱電子を強い電場(高い電圧)で加速させ,ターゲットに衝突させます.

電子がターゲットに衝突した時,下の2つの方法でX線が発生します.

  1. 電子の進行方向が曲げられた時
  2. 電子がターゲット原子の電子を弾き飛ばした時

それぞれどういう状態の時かを説明していきます.

1. 電子の進行方向が曲げられた時に発生するX線:連続X線

電場によって加速された熱電子は,ターゲットの原子付近を通過しますが,何かにぶつかったりせず,原子の間をすり抜けて通過していきます.

この時,電子は原子核に接近しますので,万有引力や原子核の+の電荷の影響を受け進路が曲がります.(静電気力や引力による軌道変更)

曲げられ方が急であるほど強いX線が発生します.曲げられ方は電子が通過する経路が原子核にどれだけ近いかによって変わってきます.通過する際の原子核との距離は様々な値を取りますので,この時発生するX線は規則性がない連続X線になります.

このほかにも,電子の運動にブレーキがかかったときも同様にX線が発生します.この時は,減少した分の運動エネルギーがX線の持つエネルギーに変換されます.

2.ターゲット原子の電子を弾き飛ばした時に発生するX線:固有X線(特有X線)

電子殻の中にいる電子は,電子殻ごとにそれぞれ決まったエネルギーを持っています.外側の殻に行くほど高いエネルギーを持っていて,内側の殻に空席ができた時は,外側の殻にいる電子が空席を埋めるように移動してきます.

しかし,もともと外側の殻にいたので,そこではエネルギーの高い状態だったのがエネルギーの低い場所に移ったためにエネルギーが余ってしまいます.

この余分なエネルギーを「X線」として放出するわけです.詳しくは,ボーアの理論や振動数条件で学びます.

簡単に言うと,高い位置にあった物体が下に落下するのと同じようなイメージです.M殻のほうが高い位置にあって位置エネルギーも大きく,L殻に落ちると位置エネルギーが減った分が余ってしまいます.通常の運動であれば余り分が運動エネルギーになりますが,この運動エネルギーの代わりにでてくるのが「X線」です.

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電子がはじき飛ばされて,他の電子がその空席を埋める時に余るエネルギーの値は物質によって決まっていますので,発生するX線の振動数も自然と限定されてきます.(\(E=hν\)より.)

ゆえに,物体特有の振動数を持つX線が特に多く観測されます.これが「固有X線」の正体.

固有X線の振動数と強さの相関関係はこんな感じになります.

部分的に出っ張っている形になります.

連続X線と固有X線を合わせたものがよくみるあのグラフになるわけです.

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