ミリカンの油滴実験・電気素量

今回は,ミリカンが行った電気素量を求める実験です.

電気素量とは?

電気素量は,ざっくりと「電子1粒が持つ電気量(電荷の大きさ)」って覚えて大丈夫です.

もちろん陽子1粒が持つ電荷の大きさも電気素量です.

それを求めようとしたのが今回の実験.

ミリカンの実験装置

絶縁体の容器の中に極板を入れて,X線を使って空気をイオン化させます.そのイオンが油滴に付着することによって油滴は帯電し,極板間に作られた電場の影響を受けるようになります.

油滴が静止しているとき,重力と静電気力が釣り合っているという等式を立てることができ,さらに電場を与えずに油滴が等速直線運動をしているとき,重力と空気抵抗が釣り合っているという等式が立ちます.

この2つを連立して電荷の大きさ\(q\)を出して,その数値の法則性を見つけようとしたのが今回の実験です.

実験

油滴に帯電した電荷と,極板によって作り出される電場によって,重力に抵抗する静電気力が発生します.

帯電した電荷の大きさを\(q\),加えた電場の大きさを\(E\),重力加速度を\(g\),油滴の質量を\(m\)とします.

電場Eの求め方
電場の強さは,加えた電圧をV,極板間の距離をxとすると,

$$E=\frac{V}{x}[V/m]$$

と表されます.

重力と静電気力が釣り合って油滴が静止しているとき,

$$mg=qE \tag{1}$$

であり,油滴が落下していくと,空気抵抗によって終端速度に達します.

空気抵抗は速度に比例するので,比例定数を\(k\),速度を\(v\)と置くと,

$$mg=kv \tag{2}$$

となります.

(1),(2)式を連立すると,

$$kv=qE$$

$$q= \frac{kv}{E}$$

となり,質量\(m\)に依存しない形が出来上がります.

これをミリカンは何度も行い,電荷の大きさ\(q\)が常に約1.592×10-19[C]の整数倍になることを発見しました.

これが電子一つが持つ電荷の大きさで,電気素量の正体です.

現在は,\(e=1.60217653×10-19\)[C]が正確な電気素量です.

電気素量まとめ

電気素量について試験にでがちなポイント・押えておくべきポイントをまとめました.

  • 電気素量を表す記号は\(e\),単位はクーロン[C]
  • \(e \simeq 1.6 \times 10^-19\)[C]←暗記しておいたほうがよき
  • 電気素量よりも小さな電気量は基本的には存在しない
最後の「基本的に存在しない」とは?
最後の「基本的には存在しない」というあいまいな書き方をしています. これは,現在ではクォークと呼ばれる素粒子が発見され,電気素量の1/3の電気量が基準になっているようなものも存在します. ただ,クォークの閉じ込めによってクォーク単体は取り出せず,結果的に電気量は最小でも電気素量になります.

電気素量・例題

ミリカンの実験でいくつかの油滴の電気量を測定した.以下にその結果を示す.

$$3.2  11.3   9.5  12.6  6.3 [10^-19C]$$

油滴に帯電した電気量は電気素量の整数倍だと仮定して,電気素量\(e\)を求めよ.有効数字は三桁とする.

例題解答
正攻法 大きさが近いものどうしで値の差をとり,おおよその電気素量を見積もる→それぞれの値が見積もった値の約何倍かを計算して,(8eみたいな形にする) 平均をとる 差を取っていくと,約1.6の整数倍になっていて,それぞれおおよそ 2e,7e,6e,8e,4eとなるので,

$$e= \displaystyle\frac{3.2+11.3+9.7+12.6+6.3}{2+7+6+8+4}\simeq15.9$$

答:\(e=15.9\times10^-19\)[C]

時間優先の方法

正攻法で差をとって電気素量の大きさを見積もったが,\(e\simeq 1.6\times10^-19\)と決めつける.それ以降は正攻法と一緒.

以上,ミリカンの油滴実験と電気素量でした.

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