放射線って実際なんなの??放射線の正体

こんにちは!今回は,放射線の正体とその発生について学んでいきます.

放射線とは??

きっと誰もが一回は撮影されたことのあるレントゲン写真.これも放射線を使った技術です.

他にも放射線って聞くと原子力発電所や核融合・核分裂反応を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか.

放射線と呼ばれるものの正体は

  • α線(α粒子の放出)
  • β線(電子の放出)
  • γ線やX線などの電磁波

の3つに分類されます.

用語集

実は原子によっては,自然に放射線を出して崩壊していく原子があります.その現象のことを放射性崩壊と呼びます.

自然に放射線を出す性質を放射能と呼び,放射能を持つ物質のことを放射性物質と呼びます.

※ここからは原子核のみの話をしていきます.電子は?電気量釣り合わなくない?って考えると沼にハマりますので考えないでください.各ページに発展内容は置いておくので,沼りたい人や気になる人は混乱覚悟でちらっと覗いて見てください,混乱しても私は知りません笑.

α線の発生

α線が発生するとき,原子核ではα崩壊という現象が起こります.

α崩壊とは,原子核から陽子2個分と中性子2個分減って,ヘリウム原子核(\({}^4_2He^{2+}\))が放出される現象のこと.

でもさっきα粒子が放出されるのがα崩壊って言いましたよね?そう,つまり,α粒子の正体は\({}^4_2He^{2+}\)のことなのです.

質量数が4減って陽子の数も2減っているのが分かると思います.

質量数234,陽子数90のトリウム原子核 \({}^{234}_{90}Th\)と,質量数4,陽子数2のヘリウム原子核 \({}^4_2He^{2+}\)に分裂したわけです.このヘリウム原子核(α粒子)が高速で飛び出したのがα線という種類の放射線になります.

α崩壊まとめ
  • α線粒子の正体はヘリウムの原子核 \({}^4_2He^{2+}\)
  • α崩壊を起こすと質量数はー4,陽子数は-2(ヘリウムの原子核分減るって考えれば暗記不要)

放射性崩壊が起こると,こんな感じに別の元素の原子核に変化していきます.

β線の発生

β線が発生するとき,原子核ではβ崩壊という現象が起こります.

β崩壊は,原子核内の中性子が陽子に変化し,電子が1つ放出される現象.β線粒子というのは,ズバリこの飛び出してきた電子のことです.

中性子が陽子に変化するだけなので質量数は変わりませんが,陽子が増えた分原子番号が1つ上がります.

α崩壊で原子番号が2つ減り,β崩壊で原子番号が1つ増えるので,α崩壊1回とβ崩壊2回で,同じ原子番号の原子核が出来上がります.(もちろん中性子の数は-4になっています.これはα崩壊のとき中性子は-2,β崩壊の時中性子-1×2回分を失っているからです.)

ちなみに,α線やγ線のエネルギーは飛び飛びなのに対して,β線のエネルギー値は連続的な値を持ちます.理由は下の発展の内容になるので,ここは暗記のほうがいいと思います.理論も考えだすと死ぬ範囲です.

【発展】β崩壊で放出されるのは実は電子だけではない?!

中性子や陽子,電子は次の文字で置かれることが多いので,ここではそれに従って解説していきます.

  • n:中性子(neutron ニュートロン)
  • p+:陽子(proton プロトン)
  • e:電子 (electron エレクトロン)
  • \(ν_e\):電子ニュートリノ
  • \(\overline{ ν_e }\):反電子ニュートリノ

\(β^-\)崩壊の反応式は

$$n=p^{+}+e^-+\overline{ ν_e }$$

になります.なにを言っているかというと,中性子が陽子に代わって電子を放出するというところまでは問題ないと思います.しかし,急に出てきたニュートリノという物質にノックアウトされた人も多いのではないでしょうか.

ニュートリノは簡単に言うと電荷を持たないチョーーちっさくて軽い粒子で,電子の比じゃないくらいのスケールで小さい物質のこと.ニュートリノは3種類に分類され,さらにそれぞれの反粒子と呼ばれる存在があるとされています.今回の\(\overline{ ν_e }\)がその例で,こいつは電子ニュートリノっていうやつの反粒子.

\(β^-\)崩壊を起こすときは,電子が放出されるとともに,反電子ニュートリノが放出されるのですが,崩壊時のエネルギーが電子と反電子ニュートリノに分配され,最終的に電子の持つエネルギーは飛び飛びではなく連続的なものになります.

高校では学習しませんのでこれ以降の内容も読み飛ばしてもらって大丈夫なものです.


実はβ崩壊には種類が多く存在しています.

一般にβ崩壊と言ったら\(β^-\)崩壊(β粒子として電子が放出される)のことをさします.

しかし,\(β^-\)崩壊とは逆に,陽子が中性子になる崩壊もあります.これを\(β^+\)崩壊と呼びます.

この場合の反応式は,

$$p^+=n+{e^-}+{ ν_e }$$

という\(β^-\)崩壊とは電気的に真逆の反応式が出来上がります.

さらに,原子核内の陽子が軌道上の電子を捕獲することにより,陽子が中性子に変化する「電子捕獲」という現象もβ崩壊に分類されます.

$${p^+}+{e^-}=n+{ ν_e }$$

実はニュートリノ発見の手がかりになったのがこのβ崩壊で,β線(放出された電子)の持つエネルギーだけ連続的な値を持つ理由が不明で長年議論されていました.

スイスの物理学者パウリ氏は,この問題に「電子以外にも観測できない”何か(中性微子)”が放出されていて,そこにエネルギーが分配されているのではないか」という仮定を提唱しました.

これが後に「ニュートリノ」として命名されることになる物質だったのです.

γ線の発生

ガンマ線は,これまでのα線・β線とは違って波長の短い電磁波のこと.X線とほとんど同じもので,X線に比べて短い波長の電磁波です.

具体的にどのくらいの波長からガンマ線なのかというはっきりした定義はなく,ガンマ線とX線の区別はその発生原理で区別されます.

  • X線:電子がエネルギー準位の低い軌道に移った時や,荷電粒子に加速度が加わった時に発生
  • γ線:主に原子核のエネルギーが高い状態から低い状態に変化するときの余分なエネルギーの放出で発生

ざっくり言えば,原子核から発生すればγ線で,荷電粒子に加速度がかかったりエネルギー準位の低い軌道に移った時がX線.

もちろん,宇宙からやってくる波長の短い電磁波(宇宙線)も放射線の一種で,基本的には超の短いものが多いのでγ線に分類されています.

まとめ

今回の内容のまとめです.

α線まとめ
  • α線:ヘリウム4の原子核\({}^4_2He^{2+}\)が高速で飛び出したもの.
  • 紙一枚で防御できるほど透過力は弱い
  • 反対に,電離作用は強い
  • 磁場・電場の影響を受ける
  • 原子核の変化は質量数:-4,陽子数:-2,原子番号:-2(\({}^4_2He^{2+}\)が放出されることを知っておけば暗記不要で導出可)
β線まとめ
  • β線:電子が高速で放出されたもの
  • プラスチック1cmくらいで防御できる透過力
  • 電離作用は中間くらい
  • 原子核の変化は質量数不変,中性子-1,陽子+1,原子番号+1
  • 磁場.電場の影響を受ける
ここにタイトル
  • γ線:波長の短い電磁波
  • 透過力強い(10cmの鉛板が必要)
  • 電離作用は弱い
  • 原子核の変化:原子核の持つエネルギーが減少→エネルギー余剰分がγ線になる
  • 電場・磁場の影響を受けない

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