X線の波動性
X線は電磁波の一種なので,もちろん波としての性質も持ち合わせています.光や音波,水の波などのような回折を起こしますし,干渉して強め合ったり弱めあったりします.
食塩や石英の結晶などにエックス線を照射すると,X線が散乱し,さらに干渉を起こすことによって蛍光壁に斑点模様が発生します.この斑点のことを「ラウエ斑点」と呼びます.
ラウエ斑点の発生
X線は波長が短いので,通常の回折格子を利用しても干渉を起こしにくい難点があります.
ラウエ斑点を発生させるときは,回折格子の代わりに,X線の波長に近い配列間隔になっている結晶を使用します.
集合体恐怖症の人ごめんなさい….
細ーく絞ったX線を結晶に照射すると,蛍光面に図のような斑点が発生します.
結晶の構造は,原子が規則的に並んでいます.原子にX線が斜めに入射すると進路が変わります.透過するX線もありますが,ラウエ斑点の発生には関係ないので省きます.
結晶は,隣の原子と一定の間隔で並んでいます.
結晶の間隔を\(d\)としてX線の照射角\(θ\)を少しずつ大きくしていきます.すると,結晶によって反射したX線どうしが干渉し始めます.
初めてX線どうしが強め合ったとき,山と山,谷と谷がそれぞれ重なります.つまり,隣のX線との経路長差が1波長分ずれたとき(同位相になったとき)にはじめて強め合って斑点ができるわけです.
ブラッグの条件
隣のX線との経路差は,原子の間隔\(d\),X線の照射される角度\(θ\)を使うと次のようになります.
$$経路差=2\times d\sin θ$$
さらに,強め合って斑点が生じている時,隣同士のX線の経路差は1波長の整数倍になっていることが分かります.
このことから,次の式が成り立ちます.
$$nλ=2\times d\sin θ (n=自然数)$$
これを「ブラッグの条件」と呼びます.
結晶を使ってX線の干渉を起こした時に強め合う条件が「ブラッグの条件」と呼ばれるだけで,回折格子を使ったふつうの光の干渉実験と全く同じです.
原子間隔のわかっている結晶を使えばX線の波長を特定できますし,X線の波長が分かっているものを使えば結晶の原子間隔を調べることもできます.
それでは,今回のまとめです.
- 結晶に斜めにX線を入射し,蛍光壁に当てると斑点模様ができる.この斑点が「ラウエ斑点」.
- 結晶を通るときに生まれる経路差は\(2d\sin θ\)
- ブラッグの条件:「経路差=波長の自然数倍」のとき強め合う.式にすると,\(nλ=2\times d\sin θ\)
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